更新日: 2020.02.21 控除
寡婦控除とは?シングルマザーがやるべき手続きについて解説
シングルマザー(ファザー)のご家庭にとって、寡婦(寡夫)控除はとても重要です。なぜなら、所得から一定額の控除を受けることができれば、課税対象となる所得が低くなり、シングルマザー(ファザー)対象の各種公的手当てや減免措置を受けるときの所得要件をクリアできるかもしれないからです。
そこでまず、寡婦(寡夫)控除について簡単にご説明します。
執筆者:石井美和(いしい みわ)
中央大学法学部法律学科卒業。
20年に渡り司法書士・行政書士事務所を経営し、不動産登記・法人登記・民事法務・許認可などに携わる。また、保険代理店を併設。なお、宅建士、マンション管理士など複数の資格を保有。
寡婦(寡夫)控除を受けるメリット
給料やフリーランスで稼いだお金に所得税が課されることは、多くの方がご存じかと思います。また、稼いだ金額(収入)から、会社員であれば給与所得控除があり、自営業であれば経費を引くことができることも比較的わかりやすいのではないでしょうか。
以下、会社員(サラリーマン、OL)の方が令和元年に得た給与について、給与所得控除との関係の例を示します。
例えば、給与など会社からもらう「収入」の額が年間で200万円なら、「収入金額×30%+18万円」を200万円から控除できます。つまり、200万円(給与等の収入金額)- 給与所得控除78万円=122万円となり、課税される「所得金額」は122万円ということになります。
この「所得 122万円」から「所得から差し引かれる金額」である医療費や社会保険料、生命保険料や配偶者控除、扶養控除などを差し引くと、「課税される所得金額」となります。仮に、「所得から差し引かれる金額(社会保険料控除や扶養控除などした額)」が50万円なら、「課税される所得金額」は72万円です。
この「所得から控除できる」ものとして、「寡婦、寡夫控除」があるのです。一般の寡婦控除と寡夫控除の額は27万円、特別の寡婦控除額は35万円なので、72万円から寡婦(寡夫)控除できれば、課税される「所得金額」はさらに低くなり、給料から天引きされたり支払わなければならない所得税がもっと低くなったりするということです。
寡婦(寡夫)控除の額と条件
(1)一般の寡婦控除(シングルマザー対象)
控除の適用について説明します。次の条件に当てはまる方は、27万円の一般の寡婦控除を受けることができます。
・夫と死別し、もしくは夫と離婚した後婚姻をしていない人
(または夫の生死が明らかでない一定の人)で扶養親族がいる人
または生計を一にする人がいる人(子は、総所得金額等が38万円以下)
・夫と死別した後婚姻していない人、または夫の生死が明らかでない一定の人
ただし、この場合は合計所得金額が500万円以下であること。
(2)特別の寡婦控除(シングルマザー対象)
以下の条件すべてに当てはまる方は、35万円の特別の寡婦を受けることができます。
・夫と死別しまたは夫と離婚した後婚姻していない人や夫の生死が明らかでない
・扶養親族である子がいる
・合計所得金額が500万円以下であること
(3)寡夫控除(シングルファザー対象)
以下の条件すべてに当てはまる方は、35万円の寡夫控除を受けることができます。
・合計所得金額が500万円以下であること
・妻と死別もしくは妻と離婚した後婚姻していないこと、または妻の生死が明らかでない一定の人であること
・生計を一にする子がいること
役所のどこにいけば良いの?
寡婦(寡夫)控除は、会社勤めであれば、毎年勤務先に申告する「扶養親族など申告書」で申告することで、条件を満たしていれば適用されます。しかし、「会社の人事にあまり言いたくない」などの理由で申告しないと、寡婦(寡夫)控除を受けることができません。
また、フリーランスや自営業の方であれば、確定申告時に寡婦(寡夫)控除を申告する必要があります。
この寡婦(寡夫)控除の適用対象かもしれないけれど、会社に申告していない、確定申告時に申告していないという場合や、「申告したかどうかわからない」という場合は、お住いの地域を管轄する税務署に相談してみましょう。すでに確定申告が済んでしまっていたり、年末調整が終わっていたりしたとしても、修正申告するという方法があります。
寡婦(寡夫)控除の適用により、少しでも税金が還付される可能性もありますし、次に挙げるひとり親家庭や世帯収入が低い家庭のための公的手当て(一例)の所得要件を満たすかもしれません。
・児童育成手当
・児童扶養手当
・給食費・教材費など補助
・市営(都営)など公共バス無料サービス
・医療費免除・健康保険料免除
まとめ
もし、税金だけではなく、いっぺんに各種手当の申請をしたいのであれば、まずは市区町村役場に相談しましょう。ここでおすすめなのが、総合相談窓口に聞いてみるか、「ひとり親家庭支援」業務をメインに行っている部署に相談に行ってみることです。
最近では、「子ども家庭課」「児童福祉課」など“子育て”という視点で業務を行う部署を設ける市町村が多くなっていますので、以前より縦割り行政は改善されています。
ひとり親家庭が受けることができる優遇措置や手当てにつき、「市区町村のどの課に聞いたらよいかわからない」という方は、まず「ひとり親家庭対象の支援をすべて使いたい。わからないから教えてほしい」と、勇気をもって市区町村に訴えましょう。
最初に相談窓口になってくれた課をまたいだ業務であれば、「次はこの窓口」というように案内してくれます。子どもの未来のために、行動を起こすことが大切です。
執筆者:石井美和