昔の本に「悪税54円」の記載が! いったいどんな税金? 当時の信じられない「不公平」な課税対象とは?

配信日: 2025.09.18
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昔の本に「悪税54円」の記載が! いったいどんな税金? 当時の信じられない「不公平」な課税対象とは?
古い書籍や雑誌を手に取ると、今では見慣れない「悪税」という言葉を目にすることがあります。例えば「悪税54円」といった記載を見て、これは一体何なのかと疑問に思ったことはないでしょうか。
 
実は「悪税」とは、現在の消費税の前身である「物品税」を指す俗称でした。本記事では、悪税と呼ばれた物品税の仕組みや、現在の消費税との違いを解説します。
上野梓

FP2級、日商簿記3級、アロマテラピー検定2級、夫婦カウンセラー、上級心理カウンセラー、整理収納アドバイザー

「悪税」とは物品税の俗称だった

「悪税」という言葉は、1989年の消費税導入以前に存在した「物品税」を批判的に表現した俗称です。物品税は1937年の物品特別税に始まり1989年まで約50年間にわたって日本で課されていた間接税でした。
 
物品税とは、特定の物品に対してのみ課税される個別消費税で、ぜいたく品や嗜好(しこう)品を中心に課税されていました。税率は品目によって異なり、5%から30%まで幅広く設定されていたのが特徴です。
 
例えば、宝石類には15%、毛皮製品には20%、乗用車には15%から23%といった具合に、物品の種類や価格帯によって細かく税率が定められていました。このような複雑な税体系が、消費者や事業者から批判を受け、「悪税」と呼ばれる要因となっていたのです。
 

物品税が「悪税」と呼ばれた理由

物品税が批判的に「悪税」と呼ばれた背景には、いくつかの問題点がありました。まず、課税対象となる物品の選定基準が不明確で、恣意(しい)的だという批判がありました。
 
例えば、コーヒーには課税されるのに紅茶には課税されない、洋酒には高い税率が設定されているのに日本酒は非課税といった現代では信じられない不公平が生じていました。
 
また、時代の変化とともに「ぜいたく品」の概念が変わってきたにもかかわらず、課税対象の見直しが追いつかないという問題もありました。当初はぜいたく品とされていた電化製品なども、高度経済成長期を経て一般家庭に普及したにもかかわらず、依然として課税対象となっていたのです。
 
さらに、物品税は製造業者や輸入業者が納税義務者となる仕組みでしたが、最終的には価格に転嫁され消費者が負担することになります。しかし、価格表示には税額が含まれていることが多く、消費者には税負担が見えにくいという問題もありました。
 

消費税導入の背景と物品税の廃止

1989年4月1日、竹下登内閣のもとで消費税が導入され、同時に物品税は廃止されました。消費税導入の背景には、高齢化社会への対応や、税制の簡素化・公平化を図る必要性がありました。
 
物品税のような個別消費税では、課税対象の選定や税率設定において不公平感が生じやすく、また税収も限定的でした。一方、消費税は原則としてすべての商品・サービスに一律の税率で課税されるため、より公平で安定的な税収が期待できると考えられたのです。
 
消費税の導入当初の税率は3%でした。これは物品税の平均的な税率よりも低く設定されており、消費者の負担感を軽減する配慮がなされていました。
 

消費税率の推移と現在

消費税は導入以降、段階的に税率が引き上げられてきました。1989年の導入時は3%でスタートし、1997年4月に橋本龍太郎内閣のもとで5%に引き上げられました。この時、地方消費税1%が創設され、国税4%、地方税1%という内訳になりました。
 
その後、2014年4月に安倍晋三内閣のもとで8%に引き上げられ、2019年10月には10%へと引き上げられました。現在の10%の内訳は、国税7.8%、地方税2.2%となっています。
 
2019年の10%への引き上げ時には、食料品や新聞などの生活必需品に対して8%の軽減税率が導入されました。これは、低所得者層への配慮として実施されたもので、日常生活に欠かせない品目の税負担を軽減する仕組みです。
 

まとめ

「悪税」と呼ばれた物品税は、特定の物品のみに課税される個別消費税で、その複雑な税体系や不公平感から批判を受けていました。1989年に消費税が導入されたことで物品税は廃止され、より公平で簡素な税制へと移行しました。
 
消費税は導入から35年以上が経過し、税率は3%から10%へと段階的に引き上げられてきました。軽減税率の導入など、時代に応じた制度の見直しも行われています。
 
税制は時代とともに変化していくものです。「悪税」という言葉が残る古い書籍は、日本の税制がどのように変遷してきたかを物語る貴重な記録といえるでしょう。
 

出典

国税庁 税の学習コーナー
総務省 地方消費税
 
執筆者 : 上野梓
FP2級、日商簿記3級、アロマテラピー検定2級、夫婦カウンセラー、上級心理カウンセラー、整理収納アドバイザー

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