更新日: 2019.11.12 その他税金
被災した場合、税金はどうなる? 事前に知っておきたい、税金面の支援措置について
ここでやはり思うのは、被災後の支援措置が十分に国民に周知されていないという点です。被災後は、おおむね、自治体に相談窓口が置かれ、「被災した方はご相談ください」といったアナウンスが発せられます。しかし、その前にもう少し周知されていればどんなによかったか、時間的なロスがあると感じます。
被災後としては喫緊の課題ではありませんが、税金面の支援措置も、本来ならば事前に知っておきたいことのひとつです。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
地方税の特別措置
地方税は、例えば、住民税や固定資産税、自動車税などですが、災害により被害を受けた場合、一定の要件を満たせば、これらが、一部軽減、または、免除されます。
これを「地方税の減免」といいますが、ほかにも、被災した場合、「徴収の猶予」が受けられたり、申告や納税などを期限までに行えない場合は、「期限の延長」が認められたりします。
これらの措置を事前に知っていれば、各地方税の納税段階で、どのように対応すればいいかがわかるため、ひとつ気持ちのモヤモヤが減ります。
国税の特別措置
地方税と同様に、国税においても特別措置が存在します。私たちに身近な国税というと所得税ですが、これに関し、一定の要件を満たせば減免や猶予などを受けられます。
○申告などの期限の延長
被災などで申告や納付などが期限内にできない場合、例えば、被災状態が解消された日から2ヶ月以内の範囲で、その期間が延長されます。
○納税の猶予
被災した場合、税務署長に申請することで、納税の猶予を受けることができます。対象者は、「納税者で災害により全ての積極財産のおおむね5分の1以上の損失を受けた方」または「被災し、国税を一時に納付できないと認められる方」です。
○予定納税の減額
所得税の予定納税をする人が被災により損失を受けた場合、税務署長に申請をすることで、予定納税の減額を受けることができます。ただし、これが認められるには、その年の税額が前年より減少することが見込まれる方が対象です。
○給与所得者の源泉所得税および復興特別所得税の徴収猶予など
被災により住宅や家財などに損害を受けた場合、税務署長に申請することで、所得金額の見積額に応じて、源泉所得税および復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けることができます。
これの適用を受けるには、要件として、被災した住宅や家財の損害額が、その住宅や家財の価額の2分の1以上で、かつ、その年分の所得金額の見積額が1000万円以下である方などが対象となっています。
○所得税の軽減
災害により住宅や家財などに損害を受けた場合、確定申告で、1.所得税法に定める雑損控除、2.災害減免法に定める税金の軽減免除、のいずれかを選ぶことにより、所得税の全部または一部を軽減することができます。
雑損控除については、被災により生活に通常必要な資産に損害を受けた方や災害についてやむを得ない支出(災害関連支出)をした方が対象です。また、所得税の軽減・免除については、損害額が住宅や家財の価額の1/2以上で、被害を受けた年分の所得金額が1000万円以下の方が対象となっています。
税金となると、話が難しい印象を受けるかもしれませんが、簡単にまとめると、所得税や住民税、その他の税金が減免・猶予される可能性があるということです。
ただし、細かく見ると、いずれも一定の要件があるため、自分が適用を受けられるかどうかは、最寄りの税務署や自治体の税務課に確認したうえで申請するようにしましょう。
出典:内閣府「被災者支援に関する各種制度の概要」
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)