譲渡所得とは? その2 (土地や建物を譲渡したとき)

配信日: 2020.07.02

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譲渡所得とは? その2 (土地や建物を譲渡したとき)
その1では譲渡所得の要点を説明しました。今回は、土地や建物を譲渡したときの課税形態や税額および考えるべき節税対策のポイントについて説明します。
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

土地や建物を譲渡した場合の譲渡所得の計算方法

土地や建物を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算式は次のとおりです。取得費がわからない場合の特例として、取得費を売った額の5%として申請することもできます。詳細は記事末尾のリンクを参照してください。
 
収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 = 課税譲渡所得金額

(1)収入金額

収入金額とは土地・建物を売却した際に、売主が買主から受け取る金額を指します。ただし、対価を権利や現物で受け取った場合はその権利や現物の時価を収入金額と見なします。例えば、株式で受け取った場合は、株式の時価が収入金額と見なされます。

(2)取得費

取得費には、次のものがあります。
 
1.土地の購入代金
2.建物の購入代金(ただし、建物の購入代金から減価償却費相当額を差し引いたものが建物取得費となります)
3.購入手数料
4.上記土地・建物に関する設備費・改良費
 
上記以外に取得費となるものは次のとおりです。ただし、事業所得・不動産所得などの経費として申告されたものは含みません。
 
イ)土地や建物を購入したときに納めた登録免許税、不動産取得税、特別土地保有税、印紙税
ロ)借主を立ち退かせるために支払った立退料
ハ)土地の造成費用
ニ)土地の測量費
ホ)所有権などを確保するために要した訴訟費用
ヘ)当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
ト)土地や建物を購入するために借り入れたローンの利子のうち、それらを実際に使用するまでの期間に対応する部分の利子
チ)既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金

(3)譲渡費用

譲渡費用とは、譲渡の対象となる土地や建物を売却するために支出した費用をいいます。譲渡費用のうち、主要なものは次のとおりです。
 
イ)仲介手数料
ロ)印紙税(売主が負担したもの)
ハ)立退料
ニ)土地などを売却するためにその土地の上に建てられた建物の取壊し費用とその建物の損失額
ホ)売買契約を締結している資産をさらに有利な条件で売るために支払った違約金
例えば、土地を売る契約をした後、より高い金額で売却できる可能性が出てきたために、既契約者に支払った違約金をいいます。
ヘ)借地権を売るときに支払った名義書換料など
 
すなわち、譲渡費用には土地や建物の維持・管理にかかる費用および売却代金の回収に要した費用は含まれません。

(4)特別控除額

土地や建物を譲渡する場合の特徴は特別控除額が認められ、その金額が大きいことです。国税庁によると、特別控除額は次のようになっています。
 
イ)収用等により土地建物を譲渡した場合 ・・・ 5000万円
ロ)マイホームを譲渡した場合 ・・・ 3000万円
ハ)特定土地区画整理事業等のために土地を譲渡した場合 ・・・ 2000万円
ニ)特定住宅地造成事業等のために土地を譲渡した場合 ・・・ 1500万円
ホ)平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合・・・1000万円
ヘ)農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 ・・・ 800万円
 
(注1) (ホ)以外の特別控除額は、長期譲渡所得、短期譲渡所得のいずれからも一定の順序で控除することができます。(ホ)の特別控除額は、長期譲渡所得に限り控除することができます。
 
(注2)長期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える土地建物を、また、短期譲渡所得は譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の土地建物をそれぞれ譲渡したことによる所得をいいます。
 
(注3)土地、建物の譲渡所得から差し引く特別控除額の最高限度額は、年間の譲渡所得全体を通じて5000万円です。
 
したがって、(イ)と(ロ)の譲渡が同じ年度に発生しても、特別控除額は5000万円となります。
 
特別控除は一定の要件を満たす場合に適用されるので、各項目に関する詳細条件については、国税庁のHPで確認するか、税務署に直接問い合わせることをお勧めします。

申告時期と計算方法

土地や建物の譲渡所得には分離課税方式が適用されています。譲渡所得と一口にいってもいくつかの種類があり、それぞれの種類によって課税方式が異なるので注意が必要です。
 
ですから、土地や建物の譲渡所得は、事業所得や給与所得など他の所得と合算して申告する必要はありません(このやり方を総合課税方式といいます)。税率は長期譲渡所得と短期譲渡所得で異なります。計算式は以下のとおりです。
 
(1)長期譲渡所得
 課税長期譲渡所得金額×15%
 
(2)短期譲渡所得
 課税短期譲渡所得金額×30%
 
(注)上記以外に復興特別所得税が、所得税の2.1%かかります。

譲渡に当たっての節税対策のポイント

今まで述べてきたことを総合すると、譲渡に当たりどのような点に注意すると有効な節税対策ができるかが見えてきます。ポイントは以下のとおりです。

取得費・譲渡費用には、さまざまなものがあるので、細大漏らさず計上すること

この記事で記載したのは、取得費・譲渡費用の項目にすぎません。税務的に認められるかは詳細条件によるので、詳細条件を確認の上、税務署に確認する必要があります。

特別控除額は非常に大きいので、それらが適用できるかどうかを調べ、適用できる場合にはしっかり適用する

上記で述べたとおり、自分が所有する土地や建物が何らかの事由で収用されたり、区画整理事業の対象になった場合、または、マイホームを売却するなどといった場合、2000万円から5000万円の特別控除額が認められます。

基本的に5年超の期間所有した土地や建物を譲渡した場合、税率が軽減される

5年以下の場合は課税譲渡所得金額の30%であるのに対して、5年超の長期の場合は課税譲渡所得金額の15%と税率が半減します。
 
短期譲渡か長期譲渡かを判別する基準は購入してから、譲渡するまでの期間ではなく、購入してから譲渡した年の1月1日までの期間であることに注意する必要があります。
 
その期間が5年以下か5年超かによって、短期譲渡か長期譲渡かが決まります。すなわち、土地などを売却する場合、その年の1月1日に譲渡しても、12月31日に譲渡しても、短期譲渡か長期譲渡かは変わらないことになります。
 
これらの要件に注意をして土地や建物の譲渡を行う必要があります。

まとめ

土地や建物は、金額的に大きく、また長期間にわたり所有する資産であることにその特徴があります。それらを譲渡する場合は税制を考慮に入れる必要があることが分かっていただけたと思います。
 
参考
国税庁 No.3258 取得費が分からないとき
国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
国税庁 No.3252 取得費となるもの
国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー


 

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