実家を売ったら税金はどれくらい?「3,000万円特別控除」で0円になる人の条件とは?
本記事では、実家を売却する際にかかる税金の仕組みと、3,000万円特別控除を適用できる条件、さらに確定申告や節税対策を解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
実家を売却したときにかかる税金の種類とは?
不動産を売った際に課される代表的な税金は「譲渡所得税」です。これは単なる売却価格に対して課税されるわけではなく、売却によって得た「利益(譲渡所得)」に対して課されます。
譲渡所得は以下の計算式で算出されます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費はその不動産を購入したときの金額、譲渡費用は仲介手数料や登記費用など、売却のために直接かかった費用を指します。そして、この譲渡所得に対して課される税率は、所有期間によって変わります。表1にある通り、長く所有していた方が税率が低くなる仕組みです。
表1
| 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 |
|---|---|---|---|
| 5年以下(短期譲渡) | 30% | 9% | 39% |
| 5年超(長期譲渡) | 15% | 5% | 20% |
※筆者作成
たとえば、実家を相続し、4000万円で売却したとします。取得費や譲渡費用を差し引いて譲渡所得が3000万円になった場合、長期譲渡であれば600万円の税金が発生することになります。
3,000万円特別控除とはどのような制度か
このように、売却益に対して課税される仕組みですが、実は個人が居住していた住宅を売却する場合には、最大3000万円までの譲渡所得を非課税にできる「3,000万円特別控除」が用意されています。
この制度は、不動産売却時に非常に有効な節税手段であり、多くの方が利用しています。実際に制度を活用できれば、譲渡所得が3000万円以内であれば課税は一切されません。表2で条件や手続きなどについて確認しておきましょう。
表2
| 制度名 | 居住用財産の3,000万円特別控除 |
|---|---|
| 控除対象 | 自分または家族が居住していた住宅とその敷地 |
| 控除額 | 譲渡所得から最大3000万円を控除可能 |
| 適用回数 | 一人につき年1回(通算無制限) |
| 必要な手続き | 確定申告による申請 |
| 親族間取引への適用 | 不可(親や子への売却は対象外) |
※筆者作成
この特例があれば、先述したように600万円かかるはずだった税金が、控除でゼロになる可能性があります。
不動産を高く売るなら
無料でプラン請求! 公式サイトを見る
どんな人が3,000万円控除を使えるのか
この制度は誰でも使えるわけではありません。以下のような具体的な要件をすべて満たす必要があります。
まず大前提として、「居住用として使用されていた不動産であること」が必要です。つまり、自分や親が実際に住んでいた家でなければなりません。別荘や賃貸用住宅は対象外です。
次に、売却時点でその住宅が「空き家であること」または「引っ越してから3年以内であること」が求められます。さらに、売却相手が親族である場合は適用外となります。
以上の点から、実家を相続してその後すぐに売却するケースは、比較的この制度を活用しやすい状況と言えるでしょう。
空き家でも使える「相続空き家の3,000万円特別控除」もある
実家がすでに空き家となっていて、亡くなった親から相続した物件であっても、別の制度「相続空き家の3,000万円特別控除」が使える場合があります。こちらの制度は、親が亡くなった後に相続した空き家を売却した際に適用されます。
この制度は、以下のような条件を満たしている必要があります。
・相続した不動産が昭和56年以前の旧耐震基準で建てられている
・相続開始時に親が一人暮らしだった
・相続後、その住宅を第三者に貸していない
・売却までに耐震リフォームまたは解体を行っている
・相続から3年以内に売却を行っている
これらの条件に当てはまる方であれば、譲渡所得から3000万円を控除し、税負担を大幅に減らすことができます。
控除を使っても税金がかかるときの対策
3,000万円控除を使ってもなお課税対象が残る場合には、以下のような節税対策を検討する価値があります。
まず、「取得費加算の特例」は、相続時に支払った相続税のうち一定額を取得費に加算できる制度です。これにより譲渡所得が圧縮され、税額を下げることが可能になります。
また、売却時にかかった仲介手数料や解体費、登記費用などは「譲渡費用」として控除できます。これらを丁寧に記録しておくことで、実質的な所得を減らし、課税額を減らすことができます。
さらに、所有期間が10年を超えている不動産に対しては、軽減税率(所得税10%+住民税4%)が適用されることもあります。長期保有していた場合には、税率の確認も忘れずに行いましょう。
確定申告を忘れると控除が適用されないので注意が必要
譲渡所得に対する特別控除は、自動的に適用されるわけではありません。たとえ税金が0円になるケースであっても、確定申告をしなければ控除は認められません。
実家を売却した翌年の2月16日から3月15日までに、税務署へ確定申告を行う必要があります。必要な主な書類は表3のとおりです。
表3
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 不動産売買契約書 | 売却価格の確認 |
| 登記事項証明書 | 所有者の確認 |
| 除票・住民票 | 居住の事実の証明(親や自分) |
| 費用明細 | 仲介手数料、解体費、登記費などの領収書 |
| 譲渡所得の計算書類 | 所得額の算出に必要 |
※筆者作成
万が一、申告を忘れてしまうと、税務署から後日修正申告や追徴課税を求められる可能性もありますので、早めの準備が大切です。
まとめ
実家を売却すると、高額な税金が発生するケースもありますが、「3,000万円特別控除」や「相続空き家の特例」を活用すれば、多くの場合で税金を0円に抑えることができます。ただし、条件を正確に理解し、確定申告を忘れずに行うことが前提です。
制度は非常に有効ですが、申告漏れや書類不備があると適用されないリスクもあるため、不安な方は税理士への相談も検討してください。実家の売却は一生に一度あるかないかの大切な取引です。後悔のないよう、制度の活用と正確な手続きを心がけましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
不動産を高く売るなら
無料でプラン請求! 公式サイトを見る