実家に「4000万円」の注文住宅を建てて10年後、兄弟から「不公平」と言われた…建てたあとに相続で揉めないためにどうしたらいい?
特に親名義の土地に家を建てた場合、相続のタイミングで「自分だけ得をしている」と他の兄弟から不満が出ることがあります。建築費が数千万円にもなる注文住宅だからこそ、事前の取り決めや相続対策をしっかり行わないと、将来トラブルに発展しかねません。
本記事では、実家の土地に家を建てるときに必要な対策と、兄弟間での「公平感」をどう保つかについて詳しく解説します。
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目次
なぜ「自分の土地に家を建てていない」のに不公平と感じられるのか
親の土地に家を建てた場合、形式上は「土地は親のもの」「建物は自分のもの」という状態になります。しかし、その土地に無料で住み続けられるという点が、他の兄弟から見ると「特別な利益」として映るのです。
たとえば、4000万円の建物を自己資金で建てたとしても、「土地の使用料を払っていない」「相続のときに建物ごと得をする」と思われやすくなります。特に相続時にその土地が共有対象になると、以下のような問題が起こります。
・土地の評価額が相続財産に含まれ、平等に分けることが求められる
・他の兄弟から土地の一部使用料や補償を求められる
・建物を残したまま分割が難しくなる
こうした「不公平感」は、後からの説明ではなかなか解消されません。感情の問題にも発展するため、事前の対策が欠かせません。
土地に家を建てる前に行うべき3つの対策
親の土地に注文住宅を建てる前に、将来的な相続トラブルを防ぐための対策を講じておくことが重要です。以下の3つの視点から準備を進めましょう。
1. 土地の名義について整理しておく
親名義のまま土地を使用すると、相続時に兄弟全員が相続人として関与します。これを防ぐためには、表1にあるようにあらかじめ土地の名義を建築者に移す「生前贈与」や「売買契約」を検討することが有効です。
表1
| 名義変更方法 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 生前贈与 | 将来の相続争いを回避しやすい | 贈与税の課税に注意 |
| 売買契約 | 贈与税より税負担が軽い場合も | 金銭のやり取りが必要 |
| 使用貸借契約 | 現状維持で建築可能 | 相続時に他の相続人と揉めやすい |
※筆者作成
2. 建築費や土地使用に関する取り決めを文書で残す
たとえ親や兄弟間での話し合いで合意していたとしても、口頭のやり取りだけでは後々の誤解につながります。以下のような内容を文書化しておきましょう。
・土地の使用料は無償か、有償か
・建築費用は自己負担か援助を受けたか
・相続時の土地分配に対する優遇措置があるか
・他の兄弟との取り決め内容(同意、将来の補償など)
親の協力を得て「覚書」や「公正証書」にしておくと、第三者にも内容を証明しやすくなります。
3. 遺言書で相続内容を明確にする
親が亡くなったときに、「この土地は誰が相続するのか」が明確でなければ、トラブルの火種になります。親が元気なうちに「この土地は〇〇が使用しているので、建物所有者に相続させる」といった遺言を残しておくと安心です。
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実家に建てた注文住宅の「評価」と相続税の関係
注文住宅を建てた人にとっては、「建物は自分が払ったのだから関係ない」と思いがちですが、土地が親の名義のままでは、相続時に財産評価の対象になります。相続税評価の考え方は表2にある通りです。
表2
| 相続税評価の考え方 | 内容 |
|---|---|
| 土地 | 路線価や倍率方式により評価される(時価より低め) |
| 建物(注文住宅) | 固定資産税評価額が基準(建築費より安い) |
| 使用貸借の場合の評価 | 地代が発生していないと、相続財産にカウントされやすい |
※筆者作成
このため、建物の価値は低めに評価される一方で、土地に関しては他の相続人から「使用分の利益」や「土地の取り分」を主張されるリスクがあります。
実際に揉めた場合の兄弟間での解決方法とは
「不公平だ」と兄弟から指摘された場合でも、法的にどちらが正しいかではなく、感情の対立が大きな障壁になります。冷静な対話の場を設けることが第一歩ですが、それでも解決しない場合は次のような手段が取られます。
主な解決手段
・弁護士を介した相続分割協議の実施
・土地の一部を買い取る、または他の資産で代償分割する
・家を売却して現金で分割する(最終手段)
・調停や家庭裁判所への申し立て
これらの選択肢を避けるためにも、早い段階で兄弟全員を巻き込んだ話し合いを行い、書面に残しておくことが重要です。
まとめ
実家の土地に注文住宅を建てるのは、大きな決断であり資金もかかります。しかし、建てた本人の思いとは裏腹に、兄弟間での相続トラブルにつながることもあります。とくに「親の土地を無償で使っている」「遺産分割で有利」と見なされると、不公平感が生じやすくなるのです。
だからこそ、建築前の名義整理、取り決めの文書化、親による遺言書の作成が大切になります。「家を建てるときにここまで考えるのは大げさ」と思われがちですが、10年後、20年後に後悔しないためには、今こそ真剣に向き合っておくべき課題です。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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