父の土地を「月2万円」で貸していますが、固定資産税を引くと“ほぼ赤字”…活用し続ける意味はありますか?
この記事では、賃貸による土地活用の収支バランスを具体的に分析し、経済的・相続的な観点から「続けるべきか、それとも手放すべきか」の判断材料を提供します。
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目次
月2万円で貸している父の土地、赤字でも活用し続ける意味はあるのか?
父親から相続した土地を月額2万円で貸しているものの、固定資産税や管理費を差し引くと「ほとんど利益が残らない」「むしろ赤字ではないか」と感じてしまうでしょう。特に郊外や地方の土地では、地価が伸び悩んでおり、賃料収入も都心部のような高水準にはなりづらい状況です。
このようなケースで重要なのは、「今後も貸し続ける意味があるのかどうか」を金銭面だけでなく、相続対策・節税効果・地域社会への影響といった視点も交えて総合的に判断することです。短期的な損益だけに注目してしまうと、大切な資産を見誤る可能性もあるため注意が必要です。
月2万円の賃料収入は、年間でどの程度の利益になるのか
月額2万円の収入がある場合、年間収入は24万円となります。一見すると現金収入があるように見えますが、実際には固定資産税や管理費用がこれに対してどれだけ影響するかによって、実質の利益は大きく変わります。表1で年間の収益とコストの比較を整理してみましょう。なお、地域や契約内容によって金額が異なる点に注意してください。
表1
| 項目 | 金額(年間) | 補足 |
|---|---|---|
| 賃料収入 | 24万円 | 月額2万円の場合 |
| 固定資産税 | 6万円 | 地域や評価額により変動 |
| 管理費(草刈りなど) | 3万円 | 年2回の草刈りを業者に依頼した場合 |
| 登記・更新・事務経費 | 1万円 | 必要に応じて発生 |
| 実質収益 | 約14万円 | 税引き前収益 |
※国土交通省「土地活用ハンドブック」を基に筆者作成
表1からも分かるように、固定資産税や管理費を引くと、実際に手元に残る収入は年間で14万円前後となり、月換算では約1万2千円程度にとどまります。表面上は黒字に見えても、突発的な修繕や契約更新時の手続きがあれば、赤字になる年もあるでしょう。
土地活用の目的が「収益」だけではもったいない理由
「月2万円しか入ってこない」「実質は赤字かも」という印象が強くなると、「このまま貸し続ける意味がないのでは?」と考えるのは自然な感情です。しかし、土地を活用し続ける意義は必ずしも金銭的な利益だけではありません。以下のような観点からも検討してみることが重要です。
まず、相続税対策という点で、土地を遊休地として放置するよりも、活用している方が税務上の評価額を下げられる可能性があります。貸付地として利用されていれば、路線価評価額の一定割合が減額される特例が適用される場合もあります。これにより、次世代への資産移転時に税負担を軽減することができます。
また、地域への貢献という観点も無視できません。誰かに貸すことで、土地が管理され、荒れ地化を防ぐことができます。空地が手入れされていないことで発生する草木の繁茂、ゴミの不法投棄、近隣住民とのトラブルといったリスクを避ける効果もあるのです。
さらに、将来的な資産活用の自由度を確保する意味でも、一定の賃貸状態を維持することは有効です。将来の自宅建設、子ども世代の活用、地価上昇に伴う高値売却といった選択肢を残しておくことができます。
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貸すか、売るか、それとも何もしないかの選択肢
実際に収支が見合わないと感じた場合、次に考えるべきは「売却するか、それとも継続か」という選択肢です。賃料が十分でない状態が続いている土地は、将来的にも需要が見込めない可能性もあり、早期の売却で現金化してしまうという判断も選択肢の一つです。
ただし、売却には手数料や譲渡所得税がかかること、買い手がすぐに見つからないこと、立地や市場動向によって価格が大きく変動することも理解しておく必要があります。
反対に、何もしないという選択肢も、実は一番リスクが大きいといえます。賃貸中であれば最低限の手入れがされていますが、完全に放置すると、自治体によっては「特定空家等」と認定され、固定資産税の軽減措置が外されてしまう場合もあるからです。
したがって、選択肢は表2の3つに整理できます。
表2
| 選択肢 | 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 貸し続ける | 収益は少ないが活用状態を維持 | 相続対策・地域管理に有利 | 実質赤字になりやすい |
| 売却する | 市場価格に応じて売却 | 管理の手間ゼロ/現金化 | 税金・諸費用が発生/価格下落リスク |
| 放置する | 何もしない | 手間はゼロ | 税負担増/荒廃リスク/社会的マイナス |
※国土交通省「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を基に筆者作成
継続する場合の見直しポイントと改善策
もし「今すぐに売るのは難しい」「できれば維持したい」という場合は、貸し方や契約内容を見直すことで、赤字を改善できる可能性もあります。たとえば、契約更新時に賃料の見直しを交渉する、土地の一部を駐車場として別の用途で貸し出すなど、多角的な活用が考えられます。
また、仲介会社を見直すだけでも条件が変わる場合があります。借り手が個人ではなく、企業や業者に限定されることで、安定収入や長期契約が見込めることもあります。さらに、賃貸期間を短期化して「一時使用契約」とすることで、将来的な転用の自由度を高める方法も有効です。
土地活用の見直しには、現地の不動産会社だけでなく、行政が実施している無料相談会なども活用すると、客観的な意見を得ることができます。
まとめ:収支だけでなく、将来の選択肢も含めて考える
月2万円で貸している土地が、固定資産税を差し引いて赤字に感じられる状況であっても、単純な損益計算だけで判断するのはもったいないこともあります。税務上の評価額の引き下げや、将来的な活用の選択肢を残しておく意味では、賃貸状態を維持する価値は十分にあります。
一方で、赤字幅が大きい、土地の状態が悪化している、需要がほとんど見込めないといったケースでは、売却や用途変更の選択も視野に入れるべきでしょう。大切なのは、目先の収支だけでなく、将来を見据えて「自分にとって価値ある土地のあり方」を見極めることです。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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