“親名義の家”をリフォームして住んでいたのに、相続後に兄弟が「売却して分けよう」と主張…私は追い出されてしまいますか?

配信日: 2025.10.24
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“親名義の家”をリフォームして住んでいたのに、相続後に兄弟が「売却して分けよう」と主張…私は追い出されてしまいますか?
親が所有していた家を、親の生前から自分の費用でリフォームして住んでいたが、親が亡くなった後、兄弟たちから「家を売って現金を分けよう」と言われて戸惑ってしまった方がいるようです。長年住み慣れた家を失う不安、リフォーム費用をどう扱うのか、そして“追い出される”可能性があるのか。
 
本記事では、法的な権利関係を整理しながら、現実的な対応策を解説します。
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親名義の家に住んでいても「所有権」は自分にない

まず理解しておくべきは、「親名義の家」であれば、たとえリフォーム費用を自分が負担していても、法律上の所有者は“親”であるということです。つまり、あなたが居住していたとしても、あなたの名義ではない限り、所有権は相続の対象になります。
 
親が亡くなると、その家は「相続財産」として扱われ、法定相続人全員が共同で所有する「共有財産」となります。この段階で、兄弟姉妹も等しく相続権を持つため、あなたが単独で所有を主張することはできません。
 
たとえリフォーム費用を自己負担していた場合でも、その事実が自動的に所有権を生むわけではありません。法律上は、「リフォームによって建物の価値を高めた貢献があった」として、遺産分割協議の中で“寄与分”として評価されることはありますが、あくまで調整要素に過ぎません。
 
つまり、兄弟が「家を売って現金を分けよう」と言えば、その話し合いに応じる必要がある状況になります。現時点であなたが単独で家を保有しているわけではないため、兄弟の意見を無視して住み続けることは難しいのです。
 

リフォーム費用を出していた場合、考慮される可能性がある「寄与分」とは

親の生前に家をリフォームし、その費用を自分で負担していた場合、「寄与分(きよぶん)」という制度によって、相続の分配で一部考慮されることがあります。寄与分とは、被相続人(親)の財産の維持または増加に特別な貢献をした相続人に対し、その貢献度を考慮して相続分を増やす仕組みです。
 
たとえば、あなたが老朽化した実家を自己資金で大規模リフォームし、その結果として家の資産価値が上昇していた場合、他の兄弟よりも多くの相続分を受け取れる可能性があります。しかし、寄与分が認められるには、単に「お金を出した」だけでなく、「相続財産の維持・増加に特別な貢献をした」と立証する必要があります。
 
寄与分を主張する際は、領収書や契約書、銀行振込明細など、リフォーム費用を自分が負担したことを証明できる資料をそろえておくことが大切です。また、具体的な金額を協議の中で調整するため、弁護士や司法書士に相談して「寄与分の算定額」を明確にしておくとスムーズです。
 

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兄弟が「売却して分けよう」と主張した場合の対応

兄弟の一部が「家を売却して分けよう」と主張した場合、すべての相続人が同意しない限り、勝手に売却することはできません。相続財産である不動産は、法的に“共有”となるため、売却などの処分には原則として共有者全員の合意が必要です。
 
しかし、あなた一人が住み続けている場合、他の兄弟から「不公平だ」と感じられることもあります。兄弟側から見れば、「自分は住んでいないのに固定資産税や維持費は共有財産としてかかっている」と考えるため、売却を求めるのは自然な流れとも言えます。
 
このようなとき、感情的な対立を避けるために、「遺産分割協議」を行うことが重要です。
 
協議の場では、

・家の評価額
・リフォームによる寄与分
・あなたが今後も住み続ける希望

などを整理し、最終的な分配方法を話し合います。
 
もし話し合いがまとまらない場合には、「家庭裁判所での遺産分割調停」を申し立てることも可能です。裁判所が公平な立場で調整を行い、売却や分配の方向性を決定します。
 

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住み続けたい場合の選択肢と現実的な落としどころ

あなたが「今後も家に住み続けたい」と考えるなら、現実的には次のような選択肢を検討できます。
 
ひとつ目は、「代償分割」です。代償分割とは、他の兄弟の持分を金銭で買い取る方法です。たとえば、家の評価額が2000万円で兄弟が2人いる場合、あなたが1000万円を支払えば、家を単独所有にすることができます。この場合、資金をどう用意するかが課題になりますが、住宅ローンや相続人間での分割払いの合意など、方法はあります。
 
もうひとつは、「共有状態のまま住み続ける」方法です。ただし、この方法では、他の相続人の持分を尊重する必要があり、将来的に売却を求められた際にはトラブルになりやすい点がデメリットです。共有状態を続ける場合は、持分割合や固定資産税負担を明確にしておくことが不可欠です。
 
表1は、主な対応策を整理したものです。
 
表1

対応策 メリット デメリット 実行に必要な手続き
代償分割
(買い取り)
単独所有できる/将来的トラブル防止 資金負担が重い 鑑定評価・登記変更・合意書作成
共有状態で居住 今すぐ資金不要/継続居住可能 将来的に売却を求められるリスク 固定資産税負担割合の明記
売却して現金分割 平等で透明性が高い 自宅を失う/引越し負担 相続人全員の合意・仲介契約

※法務省「民法(相続関連)ガイド」を基に筆者作成
 

家を「追い出される」可能性とその防止策

兄弟が「売却して分けよう」と主張しても、あなたが即座に追い出されるわけではありません。不動産の売却には、法的手続きと相続人全員の同意が必要です。そのため、あなたの同意なく第三者への売却が進むことはありません。
 
しかし、相続人同士の合意が得られず調停・審判に進んだ場合、最終的に「家を売却して分割する」という判断が下される可能性があります。この場合、裁判所の決定に基づいて不動産が処分されるため、強制的に退去を求められることもあり得ます。
 
このような事態を避けるためには、早期に「自分の住居を確保する方向性」を固めておくことが重要です。たとえば、兄弟に誠実に説明し、代償分割案を提示する、または他の家族と共同で資金調達を検討するなどの現実的な対応を進めましょう。感情的対立が長期化すると、法的にはあなたの立場が弱くなってしまうこともあります。
 

まとめ

親名義の家をリフォームして住んでいたとしても、相続発生後は兄弟も等しく権利を持ちます。あなたのリフォーム負担は寄与分として評価される余地がありますが、単独所有を主張するには法的裏付けと協議が必要です。
 
「追い出されるかもしれない」と不安になる前に、まずは冷静に現状を整理し、兄弟と対話の場を設けましょう。合意が難しい場合は、専門家や家庭裁判所の調整を利用し、公正な方法で落としどころを探すことが、家族関係を壊さずに資産を守る最善の道です。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 

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