「固定資産税を減らしたいから」と親が“畑作”を始めたけど…それ、逆に損してませんか?家庭菜園の評価はどのように行われる?
しかし、その行動が本当に節税につながっているかどうかは慎重に見極める必要があります。実は、家庭菜園のような小規模な耕作では“農地”として認められず、かえって税負担が増えてしまう可能性もあるのです。
この記事では、家庭菜園や畑が税務上どのように評価されるのか、そして思わぬ“損”を防ぐための判断ポイントを分かりやすく解説します。
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目次
「固定資産税を減らしたいから畑を始めた」その発想は本当に得策?
親御さんが「固定資産税を減らしたい」との思いから、所有する土地を畑にして耕作を始めたという話は少なくありません。しかし実際には、畑にすることで逆に税負担が増えたり、利用コストがかさんで収支が苦しくなったりするケースも見受けられます。
まず注意したいのは、土地を「畑=農地」と扱えるかどうか、その区分や現況が認められるかどうかで課税・評価方法が変わる点です。畑にしても、自治体や税務当局が「これは単なる庭・趣味用途」「農業としての実態がない」と判断すれば、宅地並み評価になってしまう可能性もあります。
実際のところ、家庭菜園程度の小規模な耕作であれば、税務上「畑」として認められず、宅地として扱われることもあるのです。
また、畑にしてからは管理(肥料・灌水・除草・耕作など)の手間、道具や資材のコスト、時間的労力も発生します。
それらのコストを考え合わせると、「固定資産税を減らそうとしたのに、実質的に損をしている」可能性は無視できません。そこで、まずは「畑・家庭菜園の評価の仕組み」を正しく理解することが、対策を検討する第一歩となります。
税務上どう評価されるか
畑や田といった農地は、税制上、宅地とは異なる評価ルールが適用されます。国税庁もその評価区分を定めており、農地は主に「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」の4種類に分類され、それぞれ評価方法が変わります。
ここで要注意なのは、「家庭菜園程度」の小規模な耕作だけでは、税務当局がそれを“農地”として認めない可能性がある点です。
表1は、農地評価の基本的な区分と評価方法、適用条件を整理したものです。なお、具体的な評価は自治体・税務署の判断により異なる点に注意してください。
表1
| 農地区分 | 評価方式 | 主な考慮要素 | 適用されやすい地域・条件 |
|---|---|---|---|
| 純農地 / 中間農地 | 倍率方式 | 評価倍率、周辺農地との比較 | 田舎・郊外、転用可能性低い地域 |
| 市街化区域農地 | 宅地並み評価 | 類似宅地価格・造成費控除 | 都市近郊・宅地化の可能性が高い地域 |
| 市街地周辺農地 | 宅地価格の80%程度評価 | 周辺宅地価格に準じて評価 | 都市近隣で農地と宅地が混在する区域 |
※筆者作成
このように、畑として使えば評価が下がるという単純な構図にはなりません。むしろ、宅地並みに評価される農地扱いをされてしまえば、税負担も高くなる可能性があるのです。
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畑を始めた結果、逆に損するケースとは?
次に、実際に「畑を始めたことで逆に損をしてしまう」可能性のある要因を、複数の視点から解説します。
管理コストと時間コストがかかる
畑を維持するためには、水や肥料、種苗、機材、除草、耕作などの作業が必要です。これらのコストや時間を無視すると、得られる利益よりも支出が増えてマイナスになることがあります。特に高齢者や遠方に住む相続人にとっては、この管理負担が重くのしかかることが多いです。
税務当局が農地と認めない可能性
前述のとおり、小規模な家庭菜園程度では税務が“農地”として扱わず、宅地評価を適用するケースがあります。つまり、畑にしても税負担が軽くならないどころか、高い評価を課される可能性もあるのです。
将来的な用途変更の妨げになる可能性
もし将来その土地を住宅地や施設用地などに転用したいと考えていた場合、畑として長期間維持してしまうと、転用手続きが煩雑になる可能性があります。農地法や都市計画法の制約、許可・届出義務が発生することもあり、転用コストがかかります。
税制優遇措置に適合しないこともある
農地には、軽減税率や負担調整措置などの優遇制度がありますが、すべての農地、すべての用途で適用されるわけではありません。特に市街化区域農地などでは、宅地並み評価扱いとなり、優遇措置が働きにくいケースもあるのです。
このように、単に「畑にすれば税が下がるだろう」と安易に考えて行動すると、結果として管理負担が重く、評価で不利になり、期待どおりの節税にならないリスクが出てきます。
どのように判断すればいいか:確認すべきチェックポイント
畑を始めようと考えている、あるいはすでに始めてしまったけれど不安を感じている方に向けて、判断材料となるチェックポイントを紹介します。
1.土地が市街化区域か市街化調整区域か
もし土地が市街化区域にあるなら、宅地並み評価が適用されやすく、畑としての優遇措置が働きにくい可能性があります。
2.周辺の宅地価格と造成費を把握しておくこと
畑評価が宅地並み評価になる場合、近隣の宅地価格から造成費を差し引いた額が基準になるため、造成コストを事前に見積もっておくことが重要です。
3.実際に農業として機能しているかどうか
畑であることが名目上だけ、管理がいい加減で実態がないと判断されれば、農地評価が否定される恐れがあります。
4.管理コスト・手間を試算する
種苗・肥料・水やり・除草・道具維持など、現実的なコストと労力を見積もり、収入(あるいは節税効果)と比較することが不可欠です。
5.将来の利用可能性も視野に入れる
近い将来、自宅建設、売却、用途転換などを考えているなら、畑扱いを長く続けることが妨げとなる可能性があることを念頭に置いておきましょう。
以上のような要素を総合的に見比べたうえで、「畑にすることで得するのか」「むしろ損になるリスクがあるか」を冷静に判断することが大切です。
まとめ
「固定資産税を減らしたいから」との意図で土地を畑にしても、それが必ずしも節税につながるとは限りません。評価区分や地目認定、税務当局の判断、実際の管理コストなど、さまざまな要因が関係してきます。
畑を始める前には、まずその土地がどの区分に位置するか(市街化区域かどうか、宅地並み評価対象かどうかなど)を調べ、近隣の宅地価格や造成費、管理コストを見積もるべきです。さらに、税務上その畑が正しく「農地」と認められる可能性を確認し、実務的な負担と見比べてから実行するのが賢明です。
どうしても判断が難しい場合は、自治体の税務担当部門、不動産鑑定士、税理士などの専門家に相談し、客観的な見立てをもらうのがおすすめです。指定の市役所サイトでも、地目・税制・課税基準に関する案内がされています。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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