夫の実家を売却して老後資金に充てたいのに、義姉が猛反対…「相続分は放棄したけど気持ちがある」と言われています。どうすべきでしょうか?
本記事では、義姉の放棄主張の法的効力・売却への権利と手続き・感情面への配慮を総合的に整理し、どのように進めるべきかをご紹介します。
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「相続分を放棄した」は本当に売却を阻む力になるのか?
義姉が「相続分は放棄した」と主張するケースですが、まずはその意味と法的効果を確認しておく必要があります。「相続放棄」と「相続分の放棄」は異なる制度であり、その違いがこのケースを左右します。
「相続放棄」は、借金などの債務も含めて被相続人の遺産すべてを放棄するものであり、家庭裁判所で手続きを行い、認められる必要があります。放棄が認められれば、最初から相続人でなかった扱いとなります。
一方、「相続分の放棄」は民法上明文の規定があるわけではなく、単独での意思表示として扱われ、遺産の分割対象から自分の取り分を辞退するという意味になります。放棄が認められたとしても、他の相続人の遺産をどう分けるかの協議には影響を与え得ます。
したがって、義姉の「放棄した」という主張だけでは、自動的に売却を阻む力にはなりません。他の相続人の合意や遺産分割協議が成立していれば、売却手続きは理論上進められる可能性があります。
売却手続きにおける権利・制約・対応の流れ
義姉の反対があっても、売却を進める際には次のような法的枠組みや対応方法が関わってきます。
まず、遺産分割協議が極めて重要です。相続人全員で遺産の配分方法(売却・持ち分取得・代償分割など)を協議し、合意内容を文書に残すことが基本になります。この協議が整えば、物件の売却も可能となります。
もし協議で意見がまとまらない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停や、調停が合意に至らなければ審判に移行し、裁判所の判断を仰ぐことになります。裁判所は、法定相続分や事情を考慮したうえで、売却や分け方を命じることがあります。
また、共有名義になっている不動産を売却するには、通常は全共有者の同意が必要です。反対者がいる状態では売却できないというケースもあります。ただし、調停・審判で売却を命じられることもあります。
さらに、売却後に義姉が反対して立ち退きなどを拒む可能性もあるため、その前段階として契約内容を明確にし、立ち退き手続きの準備をしておくことも必要です。相続した不動産に親族が住んでいて立ち退きを拒否されるケースでは、使用貸借契約の成立などが争点となることがあると解説されています。
表1は、売却手続きに関して想定される手段とその要点をまとめたものです。
表1
| 手段 | 必要条件 | 長所 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 遺産分割協議による売却 | 全相続人の合意 | スムーズに売却可能 | 合意を得る対話力・交渉力が必要 |
| 調停/審判 | 協議が不成立の場合 | 強制力を伴う決定を得られる | 時間・費用がかかる |
| 強制売却命令 | 裁判所判断後 | 共有者の反対を排した売却 | 相手の不満が残りやすい |
| 使用貸借の整理 | 義姉が無償で居住している場合 | 賃貸契約化や立ち退き対応を明確化 | 契約形態が争点になり得る |
※筆者作成
売却を実行するには制度・手続き・戦略が関わっており、義姉の反対をただ押し切るだけではなく、法的整備と合意形成が肝要です。
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感情と調和を図る対応:義姉の気持ちを無視しない配慮
法律的に売却可能であっても、義姉の「気持ち」を無視して進めると家族関係が大きく傷つく恐れがあります。実質的な手続きを進めるとともに、感情的ケアを怠らない対応が成功の鍵となります。
まず、義姉と可能な限り丁寧に話し合うことが重要です。「相続分は放棄したが、気持ちがある」という意見には、実家に対する思い入れや執着が表れていることが多いため、その根底にある価値観や不安を聞く場を設けましょう。
話し合いのなかで、売却益の一部を義姉に支払う代償措置を提案するなど、双方が納得できる形を模索するのが現実的な解決策です。たとえば、「あなたには一定金額を先に支払う」「住み替え資金を提供する」などのスキームを構築することで、感情的な反発を和らげる可能性があります。
また、専門家を交えることも有効です。不動産仲介業者や相続専門の士業(弁護士・司法書士など)を第三者に立て、客観的な意見を示してもらうことで話し合いが進みやすくなることがあります。
最善の判断に向けて
売却を進める際は、以下のステップを順序立てて進めることをおすすめします。
・不動産鑑定や複数社査定を活用し、売却見込み価格を把握する
・義姉を含む相続人全員に現状・収益シミュレーションを共有し、説明の場を設ける
・合意可能性を探るため代償分割や部分売却など複数案を検討する
・遺産分割協議書を作成し、意思を文書で固める
・協議がまとまらなければ調停申立てを検討する
・売買契約・立ち退き対応など手続きを法的に整備して進める
また、売却を急ぎすぎず、時間をかけて説得と整備を重ねる姿勢が、最終的なトラブル防止につながります。
まとめ
義姉が「相続分を放棄した」と主張しても、それだけで売却を止められるわけではありません。ですが、法的手続きだけを強行すれば、家族関係が悪化し、後々のトラブルを引き起こす可能性もあります。
理想の進め方は、まず適切な評価を行い、売却見込みと代償案を準備し、義姉や他の相続人と丁寧に対話を重ねることです。合意ができなければ、遺産分割調停・審判という制度を用いて法的解決を目指すことも視野に入れておくべきでしょう。
最も大切なのは、あなた自身の将来設計(老後資金確保など)と、家族との関係のバランスを取ることです。焦らず段階を踏み、専門家の助言も得ながら進めていくことを強くおすすめします。
また、将来に備える意味でも、遺言書(できれば公正証書遺言)の作成を母に促すこと、すでに母が遺言を書いていればその内容を確認することも重要です。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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