父名義の家を「2000万円」で妹に売却、私は1円も受け取らず。これって“売買”それとも“贈与”扱い?
この記事では、親族間での不動産売買における「売買」と「贈与」の違い、課税リスク、注意点を解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
親族間の不動産取引は“売買”か“贈与”かで税務上の扱いが変わる
不動産取引において、重要なのは「名義変更の方法」よりも「実際にお金のやりとりがあったかどうか」です。とくに親子・兄弟姉妹間での売買では、「形式は売買契約でも、実質は贈与と判断される」ことが珍しくありません。
たとえば、妹が2000万円で家を購入したにもかかわらず、実際にその代金が父に支払われていなければ、その2000万円分の不動産価値を“無償で取得した”とみなされ、贈与税の対象となる可能性があります。
一方で、たとえ親族間であっても、適正な価格での売買が成立し、実際に金銭の授受が行われていれば、売買として税務署に認められる可能性が高まります。
「売買」になるために必要な3つの要件とは
税務署が「これは売買だ」と認めるためには、表1のような要素が必要になります。
表1
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 価格が適正であること | 路線価・公示価格・不動産業者の査定額などに基づいた「時価」であること |
| 実際の支払いがあること | 銀行振込・領収書・契約書などで「金銭の授受」が証明できること |
| 契約書があること | 売買契約書が作成され、署名・捺印があり、登記内容とも一致していること |
※筆者作成
この3点のいずれかが欠けていると、形式は売買でも「実態は贈与」とみなされ、贈与税の課税対象になるリスクが生じます。特に金銭授受の証拠がない場合は、税務署からの問い合わせや税務調査の対象となる可能性が高まるため、注意が必要です。
不動産を高く売るなら
無料でプラン請求! 公式サイトを見る
今回のケースは“贈与”に該当する可能性が高い
質問にある「私は1円も受け取っていない」という点が、もっとも大きな問題です。名義変更の際に「売買」として登記を行っていても、実際に金銭の授受が行われていない場合、形式上の売買契約ではなく、実質は“贈与”であるとみなされる可能性が非常に高いのです。
この場合、妹が取得した2000万円相当の不動産については、贈与税が課税される可能性が出てきます。特に親からではなく、兄弟姉妹からの贈与に該当するため、基礎控除は110万円のみで、税率は最大55%にも達する可能性があります。
表2は、兄弟間の贈与における税率の一例です。
表2
| 贈与額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 2000万円以下 | 50% | 250万円 |
※筆者作成
このように、2000万円の贈与と見なされると、約750万円以上の贈与税が発生する可能性があり、「節税どころか大きな出費につながる」こともありえるのです。
誤解しやすい親族間取引の注意点とは
親族間では「どうせ家族だから大丈夫」と安易に取引を進めがちですが、税務署はあくまでも“実態”を重視します。たとえ善意での譲渡であっても、手続きを誤ると多額の税金を課される恐れがあります。
特に「名義変更だけして実際にお金のやり取りをしていない」「価格を極端に安く設定した」などの場合は、税務調査の対象になりやすく、後から追徴課税やペナルティが発生することもあるため注意が必要です。
まとめ
父名義の家を2000万円で妹に売却し、自身は1円も受け取っていない場合、それは「形式上の売買」であっても、税務署からは「実質は贈与」と判断される可能性が非常に高いです。特に親族間の取引は税務署が注視しており、贈与税の課税対象となると、多額の納税義務が発生することになります。
トラブルを防ぐには、売買であれば実際の支払い・契約書の整備・適正価格での取引が必須です。曖昧なまま進めると、「節税」のつもりが「課税強化」に変わってしまうリスクがあります。
不動産取引を円滑に進めるためには、税理士や司法書士、不動産の専門家への早めの相談が欠かせません。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
不動産を高く売るなら
無料でプラン請求! 公式サイトを見る