「築年数が古くなってきた実家」をリフォームして住み続けるか、思い切って売却してコンパクトな家に移るか…親の高齢化で決断を迫られています。家族で話し合うとき、どこから考え始めればいいのでしょうか?
目次
「親の気持ち」から丁寧に確認する
リフォームか売却かを考える以前に、まず大切にすべきは、家に対する親の気持ちです。長年暮らしてきた家には、家具や写真といったモノだけでなく、日々の習慣や思い出といった目に見えない価値がたくさん詰まっています。子世代から見れば不便で古い家でも、親にとっては「最後までここにいたい」と思える場所かもしれません。
そのため、どんなに家が老朽化していても、いきなり「もう売ったほうがいい」と切り出すのではなく、まずは親がどうしたいと感じているのか、家への思いや希望をしっかり聞くことから始めるのが基本です。判断のスタート地点は“建物の状態”ではなく、“親の気持ち”にあるといえます。
次に確認したいのは「建物の現状と安全性」
親の思いを尊重することは大前提ですが、このまま住み続けるのが現実的かどうかは冷静に見極める必要があります。築年数が進んだ住宅では、耐震性や断熱性能、給排水管の老朽化、外壁のひび割れなど、目に見えないところでさまざまなリスクが進行している可能性があります。
こうした点を把握するには、住宅診断(ホームインスペクション)の活用がおすすめです。専門家に建物を診てもらえば、どこが劣化しているか、どのくらいの修繕が必要かが客観的に分かります。とくに耐震性や雨漏りリスクなど、親の安全に関わる項目は早めにチェックしておくと安心です。
診断結果によっては、「部分的なリフォームで済む」場合もあれば、「根本的に立て直す必要がある」と判断されることもあります。家族の直感や思い込みではなく、建物の事実に基づいた判断が重要です。
リフォームで住み続けるのはどこまでが現実的か考える
親が「できれば住み続けたい」と希望していて、かつ建物にも大きな構造的問題がない場合は、リフォームという選択肢が有力になります。キッチンや浴室、トイレなどの水回りを新しくしたり、階段や段差に手すりやスロープを設置したりすることで、高齢者にとっても快適で安全な暮らしが可能になります。
リフォームには数十万円〜数百万円の費用がかかることもありますが、住み替えよりも心理的な負担が少なく、家にある物や環境をそのまま生かせるという意味では、大きな安心感があります。また、介護保険制度を利用すれば、バリアフリー改修にかかる一部費用を補助してもらえることもあります。
ただし、築年数が古すぎる場合や、構造的な劣化が進んでいる場合には、リフォームではカバーしきれないケースもあります。老朽化が深刻であれば、せっかくリフォームしても数年後に大規模な補修が必要になることも。中長期的なコストと安全性を冷静に比較することが求められます。
「売却して住み替える」という選択の現実性
一方、家を売却してよりコンパクトでバリアフリーな住まいに移るという選択肢も、親の年齢や体力を考えると現実的です。マンションやサービス付き高齢者向け住宅に住み替えることで、掃除や階段の昇り降りといった日常の負担が減り、老後の暮らしに合った環境で安心して過ごすことができます。
また、実家の売却で得た資金を、新たな住居の取得や介護サービスの費用にあてることもでき、資産を生活に有効活用するという意味でも有益です。親にとっては引っ越しが一大イベントになりますが、手続きや準備を家族がしっかりサポートできれば、大きな負担にはなりません。
注意点としては、売却価格が思ったよりも伸びない可能性があること、また立地によっては買い手がつきにくいケースもあることです。早めに不動産会社に査定を依頼し、「今売るならどのくらいか」「どのくらいの期間で売れるか」などを把握しておくことが大切です。
家族で話し合うときに大切にしたい視点
こうした判断を家族で共有・検討するときには、いきなり結論を求めず、それぞれの気持ちや立場を出し合うことが大切です。親の希望、家の状態、費用の問題、兄弟姉妹間の役割分担、将来的な相続まで、多くの要素が絡むため、短時間で白黒つけようとせず、「方向性を探る」ことから始めるのが理想です。
また、1人で決めようとせず、必要に応じて住宅診断士やファイナンシャルプランナー、不動産会社など、専門家の意見を挟むことで、話し合いが冷静かつ現実的に進みやすくなります。感情と事実のバランスをとりながら、一歩ずつ整理していくことが、後悔のない選択への第一歩です。
まとめ
高齢の親が暮らす実家をどうするかという判断は、単に建物の話ではなく、親の暮らしをどう支え、家族としてどんな関わり方をするか、という“生き方”の選択にもつながります。
築年数が進んだ家は、それだけで価値を失うわけではありません。大切なのは、家の状態や親の気持ちを丁寧に見つめたうえで、この家を生かすにはどうするのが最善かを冷静に考えることです。
リフォームで思い出の家に暮らし続けるか、売却して新たな暮らしに踏み出すか。その選択に正解はありません。だからこそ、早めに家族で向き合い、「納得できる決断」に向けて準備を進めていくことが、後悔のない未来をつくる鍵になります。