更新日: 2020.06.04 その他相続

残された配偶者の住居と生活を守る新しい制度! 配偶者居住権と配偶者短期居住権とは?

執筆者 : 柘植輝

残された配偶者の住居と生活を守る新しい制度! 配偶者居住権と配偶者短期居住権とは?
相続財産を誰がどのように相続するかは、法律の範囲内において、遺言や遺産分割によって自由に決めることができます。それゆえに、遺産分割によって住居を失ってしまう夫や妻も存在していました。
 
そうした社会的な背景から、残された配偶者の生活の安定を守るために、2020年4月1日施行の改正民法により、配偶者居住権が創設されました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

配偶者居住権と配偶者短期居住権はなぜ創設されたの?

平均寿命が延びた昨今、夫や妻に先立たれた後も、自身の人生は何十年と続いていくことも珍しくなくなりました。
 
その一方で、相続により、長期間過ごした住居から出ていかなければならなくなるなど、負担を強いられる方も増え、社会問題にまで発展しています。そうした負担を解消するため、2020年4月より、配偶者居住権と配偶者短期居住権の制度が創設されました。

●配偶者居住権

配偶者居住権とは、相続の開始時において、被相続人(亡くなった人)が所有する建物に配偶者も居住していた場合、下記のいずれかの条件によって、引き続き無償で建物の利用を認める権利をいいます。
 
(1)遺産分割によって配偶者居住権を取得すると決まったとき(家庭裁判所での審判を含む)
(2)配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

 
なお、配偶者居住権は、被相続人と配偶者が共有していた建物についても生じます。しかし、第三者との共有状態になっていた場合は、配偶者居住権の取得ができません。

●配偶者居住権が活躍する具体的な場面

配偶者居住権が創設されるまでは、配偶者が居住建物に引き続き住み続けるには、その建物の所有権を相続したり、相続人に頼んで住まわせてもらうといったことが必要でした。
 
居住建物を相続したばかりに、他の相続財産を相続することができず、生活に困窮してしまうという事例もありました。逆に、その他の財産を相続したら、居住建物の権利を諦めざるをえないこともあります。そうした問題を解消するため、配偶者居住権が創設されました。
 
配偶者居住権は、あくまでも居住を続ける権利であるため、所有権に比べて相続財産としての価格が低く、他の相続財産と併せて相続できる可能性が高くなるのです。
 
それにより、引き続き居住建物に住み続ける権利を得ながらも、他の財産も相続できるようになり、残された配偶者の生活の安定が図られるようになったのです。

●配偶者短期居住権

配偶者短期居住権とは、被相続人の所有する建物に配偶者が無償で居住していた場合、下記の区分に従い、一定期間その建物を無償で使用することのできる権利をいいます。
 
(1)建物について配偶者を含む相続人間で遺産分割する場合…建物の帰属先の確定した日または相続開始から6ヶ月を経過する日のうち、いずれか遅い日まで
(2)それ以外の場合(建物が遺贈されていたり配偶者が相続放棄した場合など)…権利を取得した第三者から申し入れがあってから6ヶ月を経過する日まで
 
なお、配偶者が相続人から廃除されているような場合は、配偶者短期居住権を取得することができません。

●配偶者短期居住権が活躍する具体的な場面

遺言や遺産分割、遺贈などにより、居住建物に住むことができなくなってしまった場合に、配偶者短期住居権は活躍します。これにより、配偶者はすぐに立ち退く必要はなく、6ヶ月間は猶予があるため、次の生活に向けて落ち着いて準備をすることができます。

相続法の改正によって配偶者の保護が図られました

2020年4月1日施行の改正民法により、配偶者居住権と配偶者短期居住権が創設されました。それにより、一定の要件のもと、配偶者は被相続人と生活していた住居建物において、引き続き生活を送ることができるようになりました。
 
配偶者居住権と配偶者短期居住権、両者の内容について正しく理解し、相続の場面で役立ててください。
 
[出典]法務省「残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。」
 
執筆者:柘植輝
行政書士


 

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