最終更新日:2019.01.10 公開日:2018.06.28
保険

契約の数だけ保険金はもらえない!?損害保険に特有の課題…補償の重複とは?

今回は、生命保険には有り得ない、損害保険に特有の『補償の重複(=ほしょうのちょうふく)』というテーマについて考えてみたいと思います。
 
一般的な4人家族と事故を想定して、解説いたします。
 

例えば、「死亡保険金500万円」の生命保険を3本契約する

相続対策に定番のパターンです。相続人1人につき、死亡保険金500万円まで非課税です。
 
なので「相続人1人につき、死亡保険金500万円の生命保険」を契約する、つまり小見出しのようなことが言えるのです。
 

1.個人賠償特約を6本契約したと想定します

以下の家族構成を例にします。
 
Aさん=父親。Bさん=母親。Cさん=長男(1人暮らしの学生)。Dさん=次男(小学生)。Eさん=犬。
 
そして、以下のような個人賠償特約を想定します。
 
(1)自動車保険の個人賠償特約(保険金は無制限)…契約者はBさん。被保険者は家族。
(2)火災保険の個人賠償特約(保険金は1億円)…契約者はAさん。被保険者は家族
(3)火災保険の個人賠償特約(保険金は1000万円)…契約者はAさん、被保険者はCさん。
(4)児童総合保険の賠償責任特約(保険金は3億円)…被保険者は家族。
(5)学生総合保険の賠償責任特約(対人保険金5億円・対物保険金500万円)…被保険者はCさん。
(6)ペット保険の賠償責任特約(3000万円)…Eさんが起こした事故に限る。
 

2.事故を想定します。

上記の家族と個人賠償特約の想定の下、以下のような事故が起きたとしましょう。どの個人賠償特約から、いくらの保険金が出るでしょうか?
 
Ⅰ.Cさんが大学に通学途中、自転車でお店に突っ込んでしまい、修理代など100万円を弁償した。
Ⅱ.Eさんが近所の子どもをかんでしまい、治療費など10万円を弁償した。
Ⅲ.Dさんが公園で野球をしていて、ホームランを打ったは良かったが、公園に面した家の窓ガラスを割ってしまった。弁償する金額は2万円。
 
Ⅰ.の事故では。
(1)、(2)、(4)、(5)の4本の個人賠償特約に保険金を請求することができますが、受け取ることができる(弁償として支払われる)金額は100万円です。4本のうちの1本だけ保険金請求しても、4本全てに保険金請求しても100万円という金額は変わりません。
Ⅱ.の事故では。
(1)、(2)、(4)、(5)、(6)の5本の個人賠償特約に保険金を請求することができますが、受け取ることができる(弁償として支払われる)金額は10万円です。
 
5本のうちの1本だけ保険金請求しても、5本全てに保険金請求しても10万円という金額は変わりません。
Ⅲ.の事故では。
 
(1)、(2)、(4)の3本の個人賠償特約に保険金を請求することができますが、受け取ることができる(弁償として支払われる)金額は2万円です。
 
3本のうちの1本だけ保険金請求しても、3本全てに保険金請求しても2万円という金額は変わりません。
 

個人賠償特約…実は、たくさん契約していた?

いかがでしょうか?
 
「事故」はともかく、「家族と個人賠償特約の想定」は何気にありそうですし、「ウチと同じだ」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 
個人賠償特約は生命保険とは異なり、たくさん契約していても「契約の数だけ保険金はもらえない」ということが、お分かりいただけたと思います。
 
これは、個人賠償特約に限ったことではなく、(主契約である)自動車保険や火災保険にも同じことが言えます。
 

生命保険と損害保険のカルチャーの違い

生命保険には元々、「定額保障」というカルチャーがあります。これは、保険の対象となるアクシデント、つまり保険事故が起きた場合、「契約時に決めた保険金額」を支払うという考え方です。
 
と言うことは、受け取ることができる保険金額は契約の時に決まることになります。
 
一方、損害保険には「実損塡補(てんぽ)」というカルチャーがあります。これは、保険の対象となるアクシデント、つまり保険事故が起きた場合、「実際に生じた損害金額」を支払うという考え方であり、「契約の時に決めた保険金額」は「保険金の上限額」を決めたことになるのです。
 
言い換えると、損害保険は「事故によるマイナスをゼロにする」目的で契約するのであって、「事故によるマイナスがプラスになってはならない」というスタンスなのです。
 

たくさん契約しても、本当に役に立つのは?

個人賠償特約は「たくさん契約」しても意味はなさそうですね。
 
先ほどの「家族と個人賠償特約」で「もっとも役に立ちそう」なのは、Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ.の全ての事故に登場した(1)と(2)、(4)のうち、(1)ですね。
 
(2)は保険金額は1億円、(4)のそれは3億円、(1)の保険金額はナンと言っても無制限ですから。
 

個人賠償特約を、どのように見直すか?

さて、ここで、FP(ファイナンシャルプランナー)に定番のセリフ「保険の見直し」ならぬ「個人賠償特約の見直し」ということになりますね。
 
①以外の個人賠償特約(賠償責任特約)は解約を提案するのが、FPによるオーソドックスな提案なのでしょうか?
 
しかし、なかなか難しいのが現実です。というのも、先述の(3)はCさんが、アパートやマンションを借りる時に、「プランが決まった火災保険」がセットされてしまう場合が多いですからね。
 
そして、(4)や(5)も、学生や児童に必要と思われる補償がワンパッケージになっています。
 
「プランが決まって」いたり、ワンパッケージになっているものは、個人賠償特約や賠償責任特約の「特約だけ解約する」ことができません。
 
また、皮肉なことに「特約だけ解約する」ような自由がないからこそ、保険料が安くなっているとも言えそうです。
 

まとめに代えて

ということで、先述の「家族と個人賠償特約の想定」では(2)の火災保険の個人賠償特約と(6)のペット保険の賠償責任特約を解約する、という「見直し」の結論になるかと思います。
 
「損害保険の補償の重複」という課題は、実は契約者自身が気が付いていなかったりすることが多いです。
 
特にFPによる「保険の見直し」は、たいていの場合、「生命保険の見直し」をイメージする場合が多いようです。
 
筆者も昔、先輩FPに「損害保険なんて、FPの仕事じゃないよ」と言い切られてしまったことがありました。
 
これを機会に「損害保険の見直し」をなさってみては、いかがでしょうか?
 
Text:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役 専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師

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大泉稔

執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。



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