リースバックの会計処理はどうすればよい?処理のポイントを分かりやすく解説
配信日: 2020.12.01 更新日: 2020.12.25
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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多くの企業や投資家が、資金の調達方法としてリースバック取引を利用しています。リースバック取引を行うと、それに応じた会計処理が必要になります。会計処理は企業や個人の資産・利益に影響します。
特にリース期間も長いことが多い不動産のリースバック取引は、会計処理も複雑になります。資産や利益を損なわないように不動産のリースバック取引を行った際の会計処理の見分け方や、ポイントを分かりやすくお伝えします。
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リースバック取引は会計処理が必要
会計処理は、企業や個人において非常に重要な役割を担っています。資産や利益を増やし、資金を円滑に回すために必要なのが正しい会計処理です。資産が増減したとき、利益・損失が発生したときなど、現在どのような状態になっているのかをしっかりと把握するために重要です。
また、不動産などでのリースバック取引を行った際にも同様に資産・利益・損失が発生するため当然会計処理が必要です。リースバック取引とは、不動産を所有している者がその不動産の貸し手となり、借り手とともにリース期間および使用料を双方の合意をもって契約することを表します。
リースバック取引と記載していますが、会計上ではセール・アンド・リースバック取引と言います。
セール・アンド・リースバック取引の特徴は、中途解約禁止(ノンキャンセラブル)が条件であることです。何かしらの理由で中途解約をしなければいけない場合、相当額の違約金が発生するため、事実上解約不可能な条件となっています。
ですが、実際の取引では契約期間の短縮や、契約期間内でありながら退去を求められる場合もあります。片方の都合によって変更を求められた際、双方が同意すれば中途解約が可能とはなっています。
2つ目は、フルペイアウトの条件です。フルペイアウトとは、リース物件の使用によって生じる費用を借り手が負担するリース取引を言います。借り手は、貸し手からまとまった資金を受け取るとともに、対象となる不動産に住んだり運用したりすることができますが、その不動産にかかる費用を支払う義務が発生します。
例えば、対象不動産の固定資産税・保険料などです。それらを含めたものがリース料となります。何らかの理由で、損害を受けた際の修理費用も受け持つことが条件となります。
リース取引の見分け方
リース取引は対象となる資産や契約内容によって、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の2種類に分けることができます。リース取引を行った際にはどちらのリース取引となるのか見分け、会計に反映させる必要があります。
●ファイナンス・リース
不動産資産を購入した際の取引と同様のリース取引となります。フルペイアウトが適用され、売却益などを受け取るとともに、その後の費用を負担しなければいけないリース契約です。
長中期的な契約が多く、期間途中での解約は難しい中途解約禁止(ノンキャンセラブル)も適用されます。主に機械装置、大型機器などにも見られます。ちなみに不動産取引はファイナンス・リースに属しています。
●オペレーティング・リース
ファイナンス・リースが適用されないリース取引のことを言います。期間を中短期的に設定した契約が可能で、途中解約も双方の合意の上可能な取引です。売買取引ではありませんが、契約期間終了後には購入も可能です。
終了後の選択肢は他に2つあり、そのまま残価計算を行い再契約を結ぶケースと、契約終了とともに返却するというケースです。これは、契約期間を経ても、市場価格と同等に近い価値が保たれることから中短期期間の契約が可能になるということを意味しています。主に、事務機器や自動車などに多く見られるリース取引です。
リースバックの会計処理方法
2種類のリース取引を行った後には、資産として会計に記載する必要があります。ファイナンス・リースとオペレーティング・リースでは会計の処理方法が異なります。実際にリース取引を行っている企業は、取引内容の7割以上がファイナンス・リースとなっています。
不動産売却時の仕訳
リースバック取引の場合、保持していた固定資産を第三者に売却することによって資金を確保しつつ、対象となる物件を今まで通り使用することを目的としています。ですが、実際はその物件を担保として融資を受けていると考えられるため、それに応じた会計処理が必要となります。
具体的には以下の通りです。
借り手はリース物件の売却の際に発生する損益を売却時の損益として計上せず繰延処理をします。売却損の場合は長期前払費用として、売却益の場合は、長期前受収益として繰延処理を行いリース資産の減価償却費の割合に応じて減価償却費も加味して損益に計上していくのが通常です。
ちなみに長期前払費用とは「前払費用のうち、貸借対照表日の翌日から起算して1年を超える期間を経て費用となるもの」、そして長期前受収益とは「前受収益のうち、貸借対照表日の翌日から起算して1年を超える期間を経て収益化されるもの」を言います。
まず始めに確認すべき点は、取引の内容が所有権が移転する取引である所有権移転ファイナンス・リースか、それ以外である所有権移転外ファイナンス・リースであるかということも加味していくことが必要です。
〇所有権移転ファイナンス・リースとされる条件
1.譲渡条件付きリース
リース物件の所有権が、リース期間終了後またはリース期間中に移転することとなっている契約がされている取引。
リースバック取引によって、貸し手から現金を受け取る代わりに、不動産の所有権が貸し手に移動します。取引期間中は、貸し手所有となった不動産を借りている状態になります。ですが「譲渡条件付きリース」は、リース期間中や期間後に借りている不動産を購入するための資金が用意できた場合に、再購入することができる契約になっているリースバック取引です。
2.割安購入選択権付リース
リース物件をリース期間終了後または、リース期間中に借り手が購入を希望することが予想される場合、名目価格または行使する時点での市場価格で買い取る権利を契約上で認められたリース取引。
リースバック取引の契約期間の終了後に、契約期間の延長などで利用可能ですが、貸し手の都合によっては、契約更新をしない場合もあります。そのため、リース期間内または期間終了後の買い取りに対象となる不動産の購入に意欲的な場合は、購入する時点での市場価格で再購入できる権利を有する契約内容の取引です。
3.特別仕様物件のリース
借り手の用途や目的に沿って特別な建設や仕様になっているため、契約期間終了後に返却を受けても、他に借り手を探すのが難しく、借り手のみに使用されることが明らかなリース取引。
〇所有権移転外ファイナンス・リース取引
貸し手に所有権が移動した不動産の資産価値が高く、契約期間終了後などで再び借り手に所有権が移るのを拒むことができる取引です。下記の条件があります。
1.中途解約禁止(ノンキャンセラブル)が対象な不動産のリース料金総額の価値が、借り手が現金で購入したと仮定し、算出された見積現金購入価格の90%以上であるリース取引であること。
例えば、リース料金の総額が3000万円で取引された物件を借り手が再購入しようとした場合、市場価格で算出した金額が2700万円以上ある場合、不動産の資産価値が高い方に適応される取引です。
2.契約期間途中で解約ができないリース契約であり、物件の耐用年数が、およそ75%以上であると判定が出ているリース取引であること。
以上の条件に該当するかどうかで所有権移転外ファイナンス・リース取引かどうかが分かれます。
リース開始時の仕訳
セール・アンド・リースバック取引を行うことは、その対象となる物件をそのまま継続して使用することができるだけではなく、資金の調達ができるというメリットがあります。
日本の会計基準では資産を売却した場合、対象となる物件の減価償却を利息として扱います。そのため損益として計上するのではなく、長期前受益または、長期前払費用として繰り延べて計上します。
貸借対照表の仕分けでは借方に現金預金、長期前払費用または長期前受収益、リース資産が記入され、貸方には固定資産とリース債務を記入します。長期前払費用または長期前受収益は減価償却費に含めて繰り延べて計上します。そのため、毎期ごとに計上が必要となります。
IFRSにおけるリースバックの会計処理
IFRSとは、『国際財務報告基準』と言われるものです。EU(欧州連合)やアメリカではこのIFRSの会計処理を取り入れており、多くの国で適用されている会計処理方法です。IFRSでは、2016年1月にリース取引関連の会計システム『IFRS16号「リース」』を発表しました。
日本には、ASBJ『企業会計基準委員会』があり、そこで考案された日本独自の仕分け方法や会計システムを採用してきましたが、これによって日本でIFRSの会計システムを使用する企業が増えています。取り入れた企業は、リース取引に関し2019年から随時移行し適用開始となりました。
しかし、今までの基準をオンバランス要件(貸借対照表上に記載される項目)に改定することで、オフバランス要件(貸借対照表上に記載されない項目)に合わせた取引が増加しました。実態がゆがめられていることに批判が上がったため、基準を改定するという繰り返しになっていましたが、この「リース」を導入したことで、改定を繰り返し複雑になっていた会計処理が簡素化されました。
特に、重要性の低いリース取引は例外としてオフバランス処理を容認したこと、契約期間が1年以内の取引と少額(およそ50万円)の取引は、費用処理で対応するなど簡便されたことが特徴です。
また、従来は『リース資産の購入』と捉えられていましたが、IFRSでは『リース資産として使用する権利を取得』という捉え方になります。
〇リース開始時の計上
借方 リース資産 ○○○○ /貸方 リース債務 ○○○○
〇リース料金の支払時の計上
借方 リース債務 ○○○○ / 貸方 現金預金 ○○○○
支払利息 ○○○○ /
支払利息は、リース債務未返済残高に割引率をかけて算出します。
日本の会計基準とIFRSの会計処理方法は変更点が大幅にありますので、今まで取引をしていた相手が急にIFRS方式に変更することもあります。そんな時に感じた不明点や疑問点は会計士や税理士に相談・確認すると早急に対策や解決ができます。
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リースバックの会計処理は正しく行おう
リースバック取引を行う際には、ファイナンス・リースであるかオペレーティング・リース取引であるかによって計上方法が異なります。そのためどちらの取引なのかを確認することが大切です。
また、ファイナンス・リース取引の場合は、所有権の移転についても確認をし、正しく会計処理を行う必要があります。会計処理を行う上で少しでも疑問に思ったり、どのように仕訳けたらよいか迷ったりした際には、プロフェッショナルである税理士や会計士に適時相談すると正しい会計処理を行うことができます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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